2018/02/04

千葉由香『みちのく仙台常盤町 小田原遊廓随想録』

北の都に咲いた廓、宮城県仙台市・小田原遊廓──。廓とともに生きた人々から貴重な証言を集めた作品。2000年〜2004年にかけて、地域誌『別冊東北学』に連載されていた幻の作品が、復刻単行本化!地元出版社「荒蝦夷」の千葉由香氏が執筆。





廓の中に店を構えていた呉服店を経営する老夫婦による「中から見た遊廓」、偶然発見された娼妓診断書の調査、戦後に設置されたRAAとの関わり、パンパンガールを検診していた医療関係者への訊き取り、隣県山形市にあった小姓町遊廓に現存する旧駆楳院への訪問など。消えていった戦前戦後における仙台とその周辺色街の断章。

当地仙台市は東北地方最大の都市でありながら、遊廓に関する文献は驚くほど少ない。往時を知る人に訊き取りをするならば、おそらく最後のタイミングであろう2000年前後に、小田原遊廓とその周辺に生きた人たちの言葉を書き残した千葉氏の慧眼とその仕事に、読者が驚きと喜びを持って歓迎する本であると確信する。

目次

・序 一枚の写真から
・第1章 証言者
  常盤町の歴史
  残された時間
  呉服店と遊廓
・第2章 廓気質
  窮乏する農村
  日常生活
  主役・脇役
  ハレの日
  因縁
・第3章 睦之墓
  兵士と遊廓
  駆楳院と呼ばれた〈病院〉
  娼妓の墓
・第4章 生の証
  娼妓健康診断証
  娼妓の出産
  大正14年の常盤町
  生に立ち会って
・第5章 医と廓
  健康診断証の謎
  妓税と地方医療の夜明け
  健康診断証を読む
  ある娼妓
  山形の遊廓
第6章 小姓町へ
  二つの遊廓
  娼妓診療所のいま
  乙女の学生寮として
  小姓町の成り立ち
  遊廓の子どもたち
  昼下がり点景
  ネエサンの面影
・第7章 大門前
  魚屋の少年
  交番とキリスト教会
  総揚げの太鼓
  祖父との思い出
  遊廓資料の伝言
・第8章 X橋で
  OFF LIMITS
  仙台のRAA
  パンパンガール
  市立診療所の日々
  戦前の小田原病院
  保健所草創期
・著者あとがき
・発行者解説

著者略歴

千葉由香(ちば ゆか)1964年、宮城県登米市生まれ。岩手大学人文社会科学部卒業。株式会社プレスアート『せんだいタウン情報』編集部、フリーライター、『別冊東北学』編集室を経て、有限会社荒蝦夷取締役・『仙台学』編集長。

書誌情報

・著者:千葉由香
・仕様:B6 / 169ページ / モノクロ
・発行者:カストリ出版
・発行日:2018/1/1

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