『温泉・女・風土記』（昭和３１年）

眼が笑っている。その眼は心もち眇で、泊ってくれるわネ、と自信たっぷりに輝いていた。

（「脂粉」〜石川県・山中温泉〜　より）

書誌情報

・復刻解説：関根　虎洸
・復刻編集：渡辺　豪
・復刻発行：カストリ出版
・仕様：Ｂ６、２５６頁、無線綴じ

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赤線温泉ガイドブック

渡辺寛『温泉・女・風土記』を復刻！！
　昭和３０年、売春防止法の完全施行を目前に控え、いまだ全国各地には夥しいほどの赤線・青線（＝女性街）が存在していた。一人の男が、自らの足で女性街に赴き、その実相をルポタージュした奇書中の奇書ともいうべき作品、『全国女性街ガイド』。
　その『全国女性街ガイド』の作者で知られる渡辺寛が綴った、もう一つの〝女性街ガイド〟とも言うべき作品が『温泉・女・風土記』です。『全国女性街ガイド』でも垣間見られた温泉芸者への傾倒を押し進め、温泉歓楽街での芸者・女給・パンパンたちとの一期一会をエッセイ調で綴った作品。

収録箇所８０超のボリューム

北海道から鹿児島（当時の沖縄はアメリカ領）まで、全８３箇所もの温泉街を収録。『内外タイムス』、『サンケイ読物』、『１００万人のよる』、『読物倶楽部』などに寄稿されたエッセイを収録し、単行化されたのが当作品です。

収録地域

北海道：昆布温泉　　湯ノ川温泉
青森県：下風呂温泉　　大鰐温泉
岩手県：繁温泉　　台温泉
宮城県：鳴子温泉
山形県：湯野浜温泉　　湯田川温泉　　温海温泉
福島県：飯坂温泉　　東山温泉　　沼尻温泉　　磐梯熱海温泉　　常磐湯本温泉

栃木県：那須温泉　　塩原温泉　　鬼怒川・川治
群馬県：薮塚温泉　　伊香保温泉　　草津温泉　　猿ガ京温泉　　水上温泉
神奈川県：鶴巻温泉　　箱根湯本　　湯河原温泉

静岡県：熱海温泉　　南熱海温泉　　奥畑毛温泉　　伊東温泉　　熱川温泉　　西伊豆温泉　　湯ガ島温泉　　修善寺温泉　　伊豆長岡温泉
新潟県：松之山温泉　　岩室温泉
山梨県：甲府温泉　　湯村温泉
長野県：諏訪温泉　　浅間温泉　　別所温泉　　上山田温泉　　湯田中温泉　　下呂温泉
愛知県：坂井温泉
石川県：山中温泉　　山代温泉　　片山津温泉　　粟津温泉　　和倉温泉
福井県：芦原温泉

兵庫県：有馬温泉
和歌山県：紀州勝浦温泉：白浜温泉

鳥取県：浅津温泉
島根県：玉造温泉
岡山県：湯原温泉
山口県：湯田温泉

愛媛県：道後温泉　　鈍川温泉

福岡県：船小屋鉱泉
長崎県：小浜温泉
佐賀県：嬉野温泉　　武雄温泉
熊本県：白鷺の温泉　　湯之児温泉　　日奈久温泉　　雲仙温泉　　立願寺温泉　　山鹿温泉　　小天温泉　　人吉温泉　　吉尾温泉　　内牧温泉　　杖立温泉
大分県：別府温泉 湯布院温泉　　長湯温泉　　天ガ瀬温泉　　湯平温泉
宮崎県：京町温泉
鹿児島：指宿温泉　　古里温泉　　天保山温泉　　湯之元温泉　　阿久根温泉　　日当山温泉　　安楽温泉

赤線跡調査の資料としても

　エッセイとして佳作ながらも、登場する地名や情報から、赤線跡を探す手掛かりとしても有力な情報源に。例えば熊本県杖立温泉の稿には以下。

盲腸を手術した跡だと称する子宮外妊娠手術の跡のあるその女は、実は芸者でなくて、発電所のそばにある特飲の女だと、申訳なさそうに語った。

　このことから、九州電力発電所のある通りに今も残るスナック街が、かつての赤線の名残りであると確定できます。

現在の風景

温泉地マップ付き

当著で紹介されている温泉地をプロットした地図を同梱。エッセイ、地図、ストリートビューで立体的な読書体験。


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解説　関根虎洸氏

　巻末解説は元プロボクサーという異色の経歴を持つカメラマン、関根虎洸氏。近年は旧街道沿いの飯盛旅籠や、旧植民地満州国大連に現存する逢坂町遊廓などを精力的に取材。

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